蓄電池を選ぶときに容量やメーカーと同じくらい重要なのが、「全負荷型」と「特定負荷型」というバックアップ方式の違いです。これは停電したときに家のどこまで電気が使えるかを決める仕様で、後から簡単に変えられるものではありません。この記事では両者の仕組みと使える範囲の違い、200V機器や暖房・給湯の扱い、費用と分電盤の条件、どちらを選ぶべきかの判断材料を整理します。
全負荷型と特定負荷型は「停電時にどこまで電気が届くか」が違う
太陽光発電と蓄電池を組み合わせると、停電しても蓄電池にためた電気を家に供給できます。このとき、家中のコンセントと照明に電気を回すのが全負荷型、あらかじめ決めた一部の回路だけに電気を回すのが特定負荷型です。
- 全負荷型:分電盤のすべての回路に給電する。停電中も普段どおりの感覚で家電を使える
- 特定負荷型:あらかじめ選んだ数回路のみに給電する。使える部屋・コンセントが限定される
特定負荷型では、たとえば「リビングの照明とコンセント」「冷蔵庫」「寝室のコンセント」といったように、工事のときに専用の分電盤へ回路を割り振ります。停電すると、そこにつないだ機器だけが動きます。
200V機器が使えるかどうかが最大の分かれ目
実務上いちばん影響が大きいのが200Vの扱いです。特定負荷型の多くは100V回路への給電に限られるため、200Vで動く機器は停電中に使えません。
- エアコン(大型のもの、200V機種)
- IHクッキングヒーター
- エコキュートなどの電気給湯機
- 電気式の床暖房や大型の電気温水器
全負荷型でも200Vに対応するかどうかは機種によって異なり、対応していても同時に使える電力の上限があります。真夏や真冬に停電した場合、冷暖房を使えるかどうかは生活の質に直結するため、寒冷地や高齢者・小さな子どものいる家庭では重視したいポイントです。
なお、蓄電池を使わず太陽光発電の自立運転コンセントだけで凌ぐ場合は、使える電力がさらに小さくなります。この違いは停電時に自立運転で使える電気の量で詳しく整理しています。
全負荷型のメリットと注意点
メリット
- 停電中も家中のコンセント・照明が使え、生活の変化が小さい
- 200V対応機種ならエアコンやIHを使える可能性がある
- どの回路につないだか気にしなくてよく、家族の誰でも扱える
注意点
家中に給電できるということは、電気の減りも速いということです。停電が長引く可能性を考えると、意識して使わない家電のブレーカーを落とすなどの運用が必要になります。また、家全体をバックアップできるだけの出力が求められるため、一般に特定負荷型より本体価格は高くなる傾向があります。
蓄電池の容量が小さいまま全負荷型にすると、「家中使えるけれど数時間で空になる」という状態になりかねません。容量とのバランスについては蓄電池の容量の選び方もあわせて確認してください。
特定負荷型のメリットと注意点
メリット
- 本体価格を抑えやすく、導入のハードルが低い
- 給電先が限られるぶん、蓄電池の電気を長く持たせやすい
- 必要最小限の備えとして割り切れば十分機能する
注意点
最大の注意点は、停電してから「あの部屋が使えない」と気づくケースが多いことです。給電する回路は契約前に決めるので、冷蔵庫・照明・通信機器(ルーター)・携帯の充電といった優先順位を、設計の段階で家族と話し合っておく必要があります。
また、後から回路を増やしたい場合は分電盤の工事が必要になり、追加費用が発生します。将来的に電気自動車や電気給湯機を導入する予定があるなら、その点も設計時に伝えておきましょう。
選び方の判断材料
どちらが優れているという話ではなく、住まいの条件と、停電に何を求めるかで答えが変わります。次の観点で考えると整理しやすくなります。
全負荷型が向いているケース
- 停電が長引きやすい地域、台風や大雪の影響を受けやすい地域に住んでいる
- 在宅医療機器を使っている、または高齢者・乳幼児がいる
- オール電化住宅で、調理や給湯を電気に頼っている
- 夏や冬にエアコンを止められない事情がある
特定負荷型が向いているケース
- 停電はまれで、数時間から半日程度をしのげれば十分と考えている
- 導入費用をできるだけ抑えたい
- ガス併用住宅で、調理や給湯が停電の影響を受けにくい
- 必要な家電がはっきりしていて、回路を割り切って決められる
オール電化住宅の場合は、停電時に電気が使えないと調理も給湯もできなくなるため、全負荷型の優先度が上がります。電気料金プランとの関係はオール電化と太陽光発電の組み合わせで解説しています。
見積もりを取るときに確認したいこと
提案を受けたら、次の項目が書面に明記されているかを確認しましょう。口頭説明だけで進めると、停電してから想定と違うことに気づくことになります。
- 全負荷型か特定負荷型か、明記されているか
- 特定負荷型なら、給電する回路の内訳が具体的に書かれているか
- 200V機器への対応可否と、停電時に同時に使える出力の上限
- 蓄電池の容量と、想定される稼働時間の前提条件
- ハイブリッド型か単機能型か、既存のパワーコンディショナをどう扱うか
蓄電池は取り扱う会社によって提案できる機種が変わるため、複数社を比べる価値が大きい設備です。蓄電池に特化した一括見積もりサービスとしてタイナビ蓄電池があり、公式サイトでは全国の蓄電池取り扱い企業のうち最大5社へ一括で見積もり依頼ができると案内されています。同サイトは住宅用蓄電池の相場を70〜200万円(税込)と示したうえで、容量・メーカー・販売店からの見積りによって幅があると明記しています(タイナビ蓄電池公式サイト・2026年9月2日時点)。
お住まいの地域の補助制度もあわせて調べておくと、実質的な負担額が見えやすくなります。たとえば茨城県の太陽光パネル・蓄電池補助金まとめのように、県ではなく市町村が主体となって支援している地域もあります。
まとめ
全負荷型と特定負荷型の違いは、停電時に家中へ給電するか、決めた回路だけに給電するかという点にあります。分かれ目になりやすいのは200V機器の可否で、エアコンやIH、電気給湯機を停電中も使いたいなら全負荷型が候補になります。一方、費用を抑えて必要最小限を備えたいなら特定負荷型が現実的です。どちらを選ぶにしても、給電範囲と出力の上限、そして蓄電池の容量をセットで確認し、書面に残しておくことが後悔しないための最短ルートです。
よくある質問
後から全負荷型に変更できますか?
蓄電池本体の方式は基本的に機種で決まっているため、変更するには本体の入れ替えが必要になるのが一般的です。特定負荷型で給電する回路を増やす程度であれば分電盤の工事で対応できる場合もありますが、追加費用がかかります。将来の使い方を含めて、導入時に施工会社へ相談しておくことをおすすめします。
全負荷型なら停電中もこれまでどおり生活できますか?
家中のコンセントに電気は届きますが、蓄電池の容量と同時に使える出力には上限があるため、普段と同じように全部の家電を一斉に使えるとは限りません。停電が長引く場合は、使う家電を絞って電気を持たせる運用が現実的です。上限値は機種ごとに異なるので、提案書で確認してください。
太陽光パネルがあれば、停電中に蓄電池を充電できますか?
太陽光発電と連携する構成であれば、日中の発電分で蓄電池を充電しながら使うことができます。ただし天候によって発電量は変わり、夜間は充電できません。停電が数日続く想定なら、発電量が落ちる雨天時も考えて容量に余裕を持たせるか、使う家電を絞る前提で計画しておくと安心です。
※制度内容は2026年9月時点の公表情報に基づきます。補助金は年度・受付状況により変わるため、検討時は必ず各自治体の公式サイトで最新情報をご確認ください。
※記載の料金・条件は2026年9月2日時点で各社公式サイトに掲載されていた内容です。プラン改定や提供条件の変更が行われる場合があるため、申し込み前に必ず公式サイトで最新の内容をご確認ください。


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